土屋ゼミの研究テーマは、人びとの創造性に着目したメディア論やメディアリテラシーです。その中で「地域を語り継ぐ自己メディア表現とコミュニケーション」研究に取り組み、地域を語り継ぐための試みとして、リレー型デジタルストーリーテリング(リレー型DST)というワークショップを考案し、実践しています。本サイトは広島経済大学を始め学生たちがこれまで制作してきた作品をアーカイブしています。
地域の文化、災害や戦争の記憶などの継承の問題については、誰が何をどう残すのかという、残そうとする側の研究や実践は進んでいる一方、継承される側についての取り組みは多くありません。ここでは、次世代の継承者に焦点を当て、自己語りの動画制作を通じた意味の生成による継承を提案しています。
大学生たちは、地域の人たちから話を聞き、町を歩き、そこから共感を持ったり、心動かされたことから語りを生み出し、写真や映像と組み合わせて表現します。制作を通じて、地域の多様な他者と出会い、他者の経験を自己の経験と結びつけ、当事者意識の涵養や、他者理解、地域理解を深めていきます。フィールド先では多くの気づきを得られるよう写真や音の「メディウムフレーム」ワークショップにも取り組んでいます。
*デジタルストーリーテリング(Digital Storytelling: DST)は1990年代に米国カリフォルニアでメディアアーティストのディナ・アチリーらによって始められ、英国放送BBCなどが取り組み、北米、ヨーロッパ、オセアニア、南米、アジア、アフリカと世界中に広がっているメディア実践です。家族のことや身の回りの出来事をテーマに、自分で吹き込んだナレーションと写真、動画を用いて、数分の動画を制作します。客観的に事実を伝えるレポートではなく、自分の内面の思いや考えを前面に出す一人称の語りであるのが特徴です。世界中の実践者たちがアレンジを加えながら、教育、福祉・ケア、地域づくり、パーソナルヒストリー、参加型広告といった多様な分野で取り組んでいます。本ゼミでは、フィールド―ワークとデジタルストーリーテリングを結びつけ、「リレー型」の取り組みを行っています。